第29章 (番外編)クリスマス
(クリスマス)
夜勤明け、眠い目をこすりながら自宅のポストに手を突っ込んだ。
朝刊を抜いて、手紙の束を取り出す。
エレベーターに向かって歩きながら差出人を確認していくと、DMの中に一通だけ奇妙な封筒が混じっていた。
宛名の欄には私の名前しか書かれておらず、切手もないことから直接投函したのであろうことは明白だった。
裏を返してみる。
本来差出人の名前があるべき場所には真赤なキスマークだけが付けられていた。
首を傾げながら上下に振る。
ガサ、と重量のある音がして、紙以外のものも入っているようだった。
右上から切り目を入れる。
封筒をひっくり返すと、カランと音を立てて何かがエレベーターの床に転がり落ちた。
「コインロッカーの、鍵?」
〈23〉と小さなプレートのついたそれを拾い上げると私は再び首を捻った。
一緒に入っていた手紙を開くと、そこにはとある住所が書かれている。
ちょうどエレベーターは私の目的階に止まったところだったが、そのまま下まで逆戻りすることにした。
◻︎
新宿駅。
同封された手紙に書かれていた住所はここを指している。
しかし迷宮とも呼ばれるこの巨大な新宿駅にコインロッカーが一体いくつあると思っているのだ。