第27章 FBIとの攻防/黒の組織
そういえば、と安室さんはポケットから何かを取り出した。
「やはり盗聴器が仕掛けられてました。玄関ドアの外側だったので、室内へは入れなかったということでしょう。」
手の平に乗せられた親指の先ほどの黒い物体。
ジンはそれを手に取って確認すると、指先で押し潰した。パキリと乾いた音が鳴る。
「帰るぞ、ウォッカ。」
「え、いいんですかい兄貴?」
立ち上がったジンをウォッカは驚いた顔で見上げた。
「引越しを勧めるつもりでいたが…あれだけ腕がたつようなら必要ねぇな。」
なるほど、とウォッカも後を追って玄関へ向かう。
「もしFBIの奴と鉢合わせても返討ちに出来やすしね。」
「ええ、勘弁してよ。私はそんなつもりないんだから…。」
冗談ですよ、とウォッカは笑うと、エレベーターの中へジンと共に消えていった。
「もし万が一そんな事になったら連絡下さいよ。すぐに駆けつけますから。」
にっこり、と含みのある笑顔で安室さんは肩を叩いてくれる。
リビングに戻ってふと時計を見ると短針は7を指そうとしていた。
「やば、今日日勤なんですよ!そろそろ準備しないと!」
寝れなかったし朝食とってる時間無いし!と嘆いた私に、安室さんは紙袋を差し出してくれた。
「よければ朝食にどうぞ。昨日作ったので出来たてよりは味が落ちちゃいますが…。」
袋を開けるとそこには彩り鮮やかなサンドイッチが並んでいた。
準備しながらでも片手で食べられるように、という気遣いがありがたい。
「私、付き合うんなら安室さんみたいな人がいいなぁ。優しいし気がきくしかっこいいし…。」
思わず口をついて出たその言葉に、慌てて顔の前で手を振った。
「あ、すみません!変な意味じゃないんです!感想、そうただの感想なので!気にしないで下さい!」
気分を害さなかっただろうかとそっと安室さんの顔を伺う。
変わらず穏やかな笑顔の安室さんに安堵した。