第27章 FBIとの攻防/黒の組織
白み始めた空の下、車は私のマンションに到着する。
あそこでやりあった以上、再び仕掛けて来ることはないだろうというジンの判断だった。
念の為部屋の前では警戒しつつ鍵を差し込んだのだが、その心配は全て杞憂に終わった。
「しかしさくらさんが拳銃扱えるとは驚きやした。」
「銃の構え方もなかなかサマになってたじゃねぇか。」
一丁持っておくか?と言うジンに、冗談やめてよ、と肩を竦めた。
これ以上法を犯すのはごめんだ。…もう遅いのかも知れないけれど。
「流石、学生時代にクレー射撃でチャンピオンになっただけのことはありますね。」
その声に驚いて振り返ると、リビングの扉に寄りかかるようにして安室さんが立っていた。
「安室さん!何でここに…っていうかその事何で知ってるんですか!?」
隠してたはずなのに!とつい声を荒らげると、隣に座るジンが鼻で笑う声が聞こえた。
「”探り屋”バーボン、組織じゃそう呼ばれてるぜ。コイツに隠し事は無意味だから諦めるんだな。埠頭での件もどうせどっかから見てたんだろう。」
「ええ、危なくなったら手を出そうかと思っていましたが僕が出る幕もありませんでしたね。拳銃を奪った体捌きも見事でした。」
「さくらさん、武術の経験でもあるんですかい?」
「アメリカに留学中、軍事護身術を習ったんですよね?」
思わず頭を抱えた。
留学していたことを知っている同僚さえ、私が軍事護身術を習っていたことは知らないはずなのに。
「安室さんって何者…。」
「しがない私立探偵ですよ。」
「はは、そうでしたね…。」
もはや乾いた笑いしか出てこない。
一体安室さんはどういう情報網を持っているのか…いやそれは聞かないでおこう。知らぬが仏という言葉もあるくらいだ。