第5章 デート、のようなもの/ジン
結局支度が終わって車に乗り込んだのは予定より1時間遅れだった。
「どこに行くんですか?」
車は国道を走る。方角的に向かっているのは海の方だろうか。
「今晩ベイサイドホテルで、ある画家の受賞パーティーがある。それに同伴してもらいたい。」
突然伝えられた目的に思考が追いつかない。
「ち、ちょっと待ってください。パーティーってことはフォーマルが必要ですよね?ヘアメイクとか、私何にも準備してないしっていうかもっと早く言ってくださいよ!どうするんですか!」
つい早口でまくし立ててしまった。
そんな私を横目に、ハンドルを握るジンは可笑しそうに口角を上げただけだった。
「安心しろ、手配はしてある。」
納得がいかない私を乗せて車は走り続ける。
そのままベイサイドホテルに向かうのかと思いきや、繁華街へと入っていく。
やがてある一軒の店の前でジンは車を停めた。
「降りるぞ」
そこは誰でも知っているくらいの有名なセレクトショップの前で。
私は慌ててジンの背中を追った。