第27章 FBIとの攻防/黒の組織
仕事を終えて帰宅すると、マンションのエントランスに見覚えのあるシルエットがあった。
その影は携帯電話で誰かと話しているようだ。声をかけるタイミングを伺っていると、ちょうど向こうもこちらに気付いたようだった。
片手を挙げて駆け寄る。
「ジン、どうしたの?」
電話をポケットにしまった彼に問いかけた。
普段ならば勝手に部屋に入って寛いでいるというのに。
こうして律儀にエントランスで待っていることなど今までに無かったはずだ。
ジンは視線を左右に走らせると、ここでは都合が悪ィ、と言葉を濁した。
長くなる話と言うことだろうか。
「じゃあ部屋で待ってればよかったのに。」
エレベーターのボタンに伸ばした手はジンのそれに阻まれた。
「いや、俺の車でだ。」
◻︎
「え、FBI…って、あのアメリカの連邦捜査局の?」
あまりにも青天の霹靂と言わざるを得ない話だった。
ほんのこの間まで一介の勤務医だった私が、突然FBIに追われている可能性があると言われてにわかに信じられようか。
「信じられないのも無理はないでしょう。でも現実問題、既に奴らは動き出してます。さくらさんの部屋でこの話をしなかったのも、盗聴器や隠しカメラが仕掛けられている可能性があったからです。」
盗聴器、隠しカメラ。
ウォッカの口から出てくる今までの生活とは無縁すぎる単語のオンパレードに頭がクラクラしてきた。