第27章 FBIとの攻防/黒の組織
「今回のことにケリが着くまで自宅には帰るな。代わりにホテルを手配してある。」
「はあ…。」
「病院まではあっしが送迎しやすから、安心して下さい。」
「必要な物があればウォッカに言え。ホテルに入ったら1人での外出は控えろ。」
未だ混乱している私を乗せてウォッカの運転する車は首都高に入る。
「薬の資料はどこにしまってある?」
「引き出しの二重底の下です。昔漫画で読んだやり方なんだけど、ちゃんと手順を踏んで開けないと電流が流れて資料ごと焼失する仕組みになってるの。」
誰かの手に渡るくらいなら燃えちゃった方がいいんでしょ?と言うと、ジンは僅かに口角を上げた。
「ああ、流石だ。抜かりねぇな。」
ジンは大きく紫煙を吐き出す。
その肩越しに見えた夜景がとても綺麗だったが、今はそんな状況ではないと目を逸らした。
突然、ぐっと体が大きく左に振られる。
すぐにウォッカが急なハンドル操作をしたのだと分かった。
驚いてジンを見ると、いつになく真剣な顔になっている。
続いて右、そして左、また右とやや乱暴に車線を変えていく。慌ててシートの縁をつかんだ。
「尾けられているな。」
サイドミラーを覗くとベンツのカブリオレが私達と同じように車輌の間を縫って近付いて来ていた。
ニッとジンが口角を上げる。
来やがったか、と小さく呟いたのが聞こえた。
車は速度を緩めずに料金所へ進入する。
そのままETCのバーをへし折って一般道へ合流した。
高速道路と変わらぬ速度で車は走り続ける。
幸いここは工場や倉庫の多いエリアらしく、一般車両はほとんど見かけない。
稀に路肩にトラックが停まっているくらいだ。
「ウォッカ、これどこに向かっているんですか?」
「この先の埠頭です。」
「そこで奴らを引きずり出してやる。」
2人の雰囲気があまりにもピリピリしていて、それ以上話しかけるのはやめた。