第27章 FBIとの攻防/黒の組織
(FBIとの攻防)
ベルモットから「すぐに来て」と電話が入ったのは、ポアロのランチタイムが落ち着いてきた頃だった。
大女優の気紛れに付き合うのはいつものことであったが、今日は電話越しの声がいやに慌てていた。
呼び出されたホテルに着くと、ジンやウォッカ、それにキャンティとコルン、キールの姿もあった。
これだけのメンバーが揃うのは珍しい。
「何かあったんですか?」
皆の顔色も悪い。何よりあのお喋りなキャンティがまだ一言も発していないのに違和感を覚えた。
「鼠が潜り込んでいた。」
重苦しい空気の中、ジンが口を開いた。
「コニャックだ。FBIのスパイだった。」
FBI、赤井秀一の顔が頭をよぎる。
コニャックは赤井が組織を抜けた後に入ってきた男で、今思い返せばあのタイミングは疑うべきところがあった。しかし今更、後の祭りだ。
彼とは顔を合わせたことこそなかったが、そのコードネームは何度か聞いていた。
「コルンが殺り損ねてな。ただ逃しただけならまだ良かったんだが…コードネームのリストを持ち出しやがった。」
リストの持ち出し。なるほど、それでこの空気か。
上手く使えば組織に致命傷を負わせることができるそれ。
FBIからの指示だったのだろうか。やや時期尚早である気もするのだが。
「今度こそ、俺が殺す。」
「アタイも許しちゃおかないよ!」
キャンティの手に持ったライフルがガシャンと音を立てた。
「コルンとキャンティはコニャックを追え。必ずFBIの仲間に接触する前に殺れ。」
「あいよ!」
「分かった。」