第26章 温泉旅行/安室
「…さん、起きてください、さくらさん!」
規則正しい電子音とともに体を揺すられている。
ぼんやりと目を開けると安室さんの顔が目の前にあった。
「あれ、おはようございます。」
「おはようございます。8時ですよ。朝食、食べに行くんでしょう?」
そうだった、と急いで飛び起きる。
夕食に引き続き朝食まで食いっぱぐれるのはごめんだった。
ちょっと待っててください!と叫んで洗面所に飛び込むと安室さんの笑い声が聞こえた。
◻︎
「安室さん、もしかして寝てないんですか?」
私を起こした時には既に支度も完璧に終え、昨晩の疲れを微塵も見せない安室さんに舌を巻いた。
「寝ましたよ。僕ショートスリーパーなのであれくらいの睡眠でも平気なんです。」
「はーすごいですね、羨ましい。」
そう言って卵焼きを一切れ口へ放り込む。
まだ頭がぼうっとする。元々私は睡眠をとらないと駄目な方なのだ。昼夜逆転には慣れているが睡眠不足は少々キツい。
家に着いたらベッドに直行しようと決めて味噌汁を啜った。