第25章 太陽の欠片盗難事件/キッド
エレベーターでロビーに降りると、みんなはまだ状況を把握できていないようだった。
これから警察の人がロビーにいた人達の身体検査をするらしい。
中森警部と何事かを話している院長の元へ近付く。
そっとポケットから太陽の欠片を取り出すと、院長に手渡した。
目を丸くしている院長と中森警部、それに毛利探偵。
キッドが返してくれました、と告げると3人にはさらに驚かれた。
それを見た現場は水を打ったように静まり返った。
その場ですぐに鑑定が行われ、間違いなく本物であるということが証明された。
「しかしなぜキッドから取り返せたんです?」
「たまたまですよ、たまたま。月食を見ようと屋上に出たらキッドが来たのでビックリしちゃいました。」
「ほーあの騒ぎの中月食を見に、ねぇ。」
疑われている。当然といえば当然か。
ジトリと中森警部警部がこちらを睨んだかと思うと、突然手を伸ばしてきた。
「失礼。」
ぎゅむ、と頰を抓られる。
驚いて何も言えずにいると、違ったか、とその手は離れていった。
少しだけ涙目になっていると、隣にいたコナンくんが助け舟を出してくれた。
「キッドはさくらさんに変装してたんだ。だからさくらさんは今日の騒ぎのことを知らずにずっと救急センターにいたみたいだよ。」
「あ、まーたオメーは現場をチョロチョロと…!」
なるほどアイツがキッドだったのか、と悔しがる中森警部とコナンくんをつまみ上げる毛利探偵、ごめんなさーいと逃げ出そうとするコナンくん。
ロビーには再び喧騒が戻って来た。
「まあまあ、こうして無事太陽の欠片も返って来たことですし、いいじゃあないですか。山門くん、予告状の暗号のことといい助かったよ、ありがとう。」
院長と固く握手を交わしてこの事件は一件落着、かと思われた。