第25章 太陽の欠片盗難事件/キッド
「くっそー、今回は外したか…。」
彼方を飛ぶ白いグライダーを見ながら、コナンくんは悔しそうに舌打ちをした。
その様子を見ながら、私にはキッドを取り逃がしたことよりも気になることがあった。
「コナンくん、今何を蹴ったの?サッカーボールみたいだったけど…そんなの持ってたっけ?」
「ああ、これ。ボール射出ベルトって言ってここ押すとサッカーボールが出てくるんだ。すぐ萎んじゃうけどな。」
ほら、と小さなボールを出して見せてくれる。
コナンくんの言った通り、ボールはベルトを離れて数回バウンドすると音を立てて萎んでしまった。
「あ、あの日の事故はコナンくんのせいだったのね。」
頷きながら、萎んだサッカーボールを拾い上げる。
「事故って何のこと?」
「ほら、私が前に怪我したキッドを助けたことがあるって言ったじゃない?それ、ハングライダーで飛んでた時にうちのベランダに落ちて来たんだよね。あのキッドがそんな間抜けなミスするかなってずっと不思議だったんだ。」
コナンくんは暫く考えるような素振りを見せた後、ああ、と口にした。
「それってもしかして杯戸ヒルズの時?」
「そう。キッドと一緒に丁度こんな感じの空気の抜けたボールが落ちてたんだよね。その時は何だこれって思ってたんだけど。」
拾ったサッカーボールを伸ばしたり縮めたりしてみる。あの日拾ったボールと触り心地もそっくりだ。
コナンくんは決まりの悪そうな顔をした。
「悪い、まさかさくらさんの家に落ちるとは思わなかったんだ。」
ごめん、と急に元気のなくなったコナンくんの肩を叩いた。
「何で謝るの?別に私はそれで迷惑被ったわけじゃないから!ほら、コレ院長に返しに行かなきゃ。ロビー戻ろう!」