• テキストサイズ

[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第25章 太陽の欠片盗難事件/キッド


仮眠室のベッドの上で私は頭を抱えた。
「やっちゃったよ…バレたらクビかなぁ…。その前にもしかして逮捕される…?」

キッドの頼み事とは顔を貸して欲しいということだった。
もちろん最初は拒否したのだが、「世話になったオネーサンに手荒な真似したくねーんだけど。」と内ポケットから拳銃のようなものを出す仕草をされれば、頷くほかなかった。

仮眠室の洗面台を使ってみるみるうちにキッドが私と同じ顔になっていく。
ご丁寧に今日の私と同じ服まで用意していた。
最後にその白衣を貸してくれと手を差し出されたので、渋々ながらも羽織っていたそれを脱いで投げつけてやった。
サンキュー、と彼は白衣の袖に腕を通すと裾を翻してロビーへ歩いていった。

時計を見るとキッドが予告した時間まであと5分。
他の人に姿を見られないように、と祈りながら私もそっと仮眠室を後にした。




「よーし全員配置に着け!」
中森警部の声が飛ぶロビー。
その受付のカウンターの下に体を滑り込ませる。
私の格好をしたキッドは何食わぬ顔でコナンくんと談笑していた。
しかしこの距離では何を言っているかまでは分からない。

「あと1分だ!気を引き締めていけよ!今日こそキッドを逮捕だ!」
あと1分。自分の腕時計をちらりと確認する。
窓の外の月は既に赤銅色に変化していた。

カチリ、秒針が12を指した瞬間。
ロビーの電気が一斉に消える。
同時に勢いよく風が吹き抜けた。
「おいどうした!?」
「どうなっているんだね!」
「おお落ち着いて下さい、すぐに非常電源に切り替わるはずですから。」

そんなことより、と上の階に視線を走らせた。電気が落ちてしまっては命に関わる患者もいるのだ。宝石がどうのなどと言っている場合ではない。
しかしどうやら電気が消えたのはこのロビーだけのようだった。
ロビーの吹き抜けから見える上階にはちらほらと明かりの灯る部屋が見える。
ほっと安堵した瞬間、ロビーの電気が点いた。急に眩しくなった視界に目を細める。

「な、無いぞ!太陽の欠片が消えた!」
院長の叫び声で壁の絵を見上げると、確かに先ほどまでは絵の中心で光っていたはずの宝石が無く、代わりにキッドのマークが描かれたカードが貼り付けられていた。
/ 239ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp