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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第25章 太陽の欠片盗難事件/キッド


シルクハットを取った彼は恭しく一礼をすると、お願いがあるのですが、と口を開いた。
しかしそれを遮るように首を振る。

「悪いけど、これから急患が来るのよ。あなたに構ってる暇無いの。話なら後で聞くから。」
分かったらそこどいて、と扉を塞ぐように立っている彼の肩に手をかけた。
しかし手に力を入れても彼はびくともしない。

「あーそれ、俺の嘘なんだわ。」
口調を崩した彼は、悪ィ、と顔の前で右手を立てる。
驚いて思わず彼の肩から手を離した。
「え、でも電話が来たのよ?確かにあれは後輩の声だったし…。」
ポケットからPHSを取り出した。毎日聞いている声だ。聞き間違えるはずもない。
すると彼も同じPHSをポケットから取り出した。なぜ、と疑問符を浮かべていると、彼は数回キーを押すとどこかへ電話をかけ始めた。

と、同じタイミングで私の手の中でそれが震える。
「はい。」
「あ、先輩?俺っす!」
電話口から聞こえてくる声は確かに後輩のものなのだが、それと全く同じ言葉が目の前の男の口から発せられている。
「どういうこと…?」
右手に持ったPHSを取り落としそうになった。
コナンくんのように変声機を使っているというのならまだ分かる。しかし目の前の彼はPHS以外何も手に持ってはいない。

「俺、他人の声真似得意なんすよね。」
なおも彼は後輩の声のまま続ける。
「急患の電話したのは俺。そしてそれは嘘。このPHSの持ち主の後輩クンは誰もいない救急センターで真面目に業務してるぜ。」
「分かった、分かったからその声やめてよ。」
話なら聞くから、とベッドに腰を下ろした。
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