第25章 太陽の欠片盗難事件/キッド
ロビーを見渡してキッドの姿を探す。
見つけた。電気が消える前と変わらぬ位置で、彼もまた周りの人々と同じように慌てふためいていた。
当然それは演技なのだろうが、まるでキッド以外の誰かが盗ったのではないかと錯覚するくらいに違和感がない。
しばらく彼を目で追っていると、徐々に人々の輪から外れるように移動しているのに気がついた。
その足は階段の方へ向かっている。
私もそっとカウンターの下を抜け出して彼の後を尾けた。
階段の前まで来たところで立ち止まる。階段では足音が響きやすい。現に今ほど登って行ったキッドの足音がここまで響いてきている。
思い直してエレベーターのボタンを押した。患者搬送用のエレベーターならば途中で人が乗ってくることはないはずだ。
キッドは屋上のヘリポートからハングライダーで逃げるつもりだろうと見当をつけて、屋上行きのボタンを押した。
◻︎
「やっぱりオメーがキッドだったんだな。」
エレベーターの扉が開くと同時、聞きなれた声が耳に飛び込んできた。
とっさに貯水タンクの陰に身を隠す。
エレベーターの扉がヘリポート側から死角になっていてることが救いだった。
そっと声の方を伺うと、夜風の吹きつける中コナンくんと私の格好をしたキッドが向かい合っている。
キッドの羽織る白衣が風に靡く。それはキッド本来の白いマントを彷彿とさせた。
「いやだなぁコナンくん、私は皆既月食を見ようと思ってここに来ただけよ?」
「バーロ、オメーの変装なんざとっくにバレてんだよ。」
そこ、とコナンくんは彼の靴を指差した。