第24章 新たな共犯者/コナン、灰原
(新たな共犯者)
「…っは、はっ、はっ、ああもう!」
薄暗い地下道を走っていた。
小さな体ではすぐに息が上がる。歩幅も狭い。どれだけ一生懸命に走っても追いかけて来る大人の足に勝ることなどできない。
角を曲がったところで足を止めた。いや、止めざるを得なかった。
そこには高々とフェンスがそびえ立っていて、どこからどう見ても行き止まりだった。くぐれそうな穴も空いてはいない。
「哀ちゃん?どうして逃げるの?」
背後から声がする。覚悟を決めて振り返った。
しかし逆光で顔ははっきりと分からない。
いや、顔など見えなくともあの人影が誰だか私は知っている。
先程私の名前を呼んだのはよく知っている声なのだから。
「さくらさん…。」
掠れた声にしかならなかった。
もう何時間になるだろうかこの不毛な鬼ごっこは。
人影はゆっくりとこちらへ歩いて来る。
「ああ、そんなに汗かいて。可哀相に、疲れたよね。」
今楽にしてあげるから、と言う彼女の右手には拳銃が握られている。
無意識のうちに私は後ずさっていたようだ。
ガシャンと背中に当たったフェンスが派手な音を立てる。
「あなたが生きていては都合が悪いの。あなた個人に恨みは無いのだけど、悪く思わないでね。 宮 野 志 保 ち ゃ ん ?」
彼女の手にある銃口がスッと上を向く。
その引金にかかった人差し指に力が込められたと同時、けたたましい破裂音がその場に響いた。