第6章 昇る竜
家に着くと、相葉に風呂場に引っ張ってかれた。
鏡を見たら、血まみれだった。
そのまま相葉も風呂に入ってきて、俺を洗う。
「痛っ…」
腕の火傷に湯が滲みた。
相葉は無言で身体を石鹸で洗い流す。
ぼけっと座っていると、相葉の背中のマリアに笑われた気がした。
そっと手を伸ばして、相葉の背負ってる刺青に触れる。
「…なんでお前はマリアにしたんだ…?」
「救いたかったからでしょう…」
「誰を…?」
「さあ…今となってはもう…わかりません」
右肩の月下美人が美しい。
相葉の刺青はとても綺麗だった。
美しいのに、左の肩には荒々しい龍が俺を睨んでいた。
「さあ…もういいです…」
風呂から出ると、相葉が俺の身体にバスローブを掛けた。
「腕に薬を塗りますから…」
「いい…こんなのほっときゃ治る」
「…塗らせて下さい…」
相葉の声が詰まった。
こいつは…すぐ泣くんだから…
相葉の身体にバスタオルを掛けてやった。
俺はそのまま寝室に戻った。
若衆たちが、俺を心配していた。
なにもないから寝てしまえと言うと、振り返りながら各々部屋へ戻っていった。
ベッドに倒れこむと、身体が動かなくなった。
また人を殺した。
なのになにも感傷が起こらない。
感覚が擦り切れる。
どんどん俺は、人じゃない何かになっていくようだった。