第6章 昇る竜
「俺が嘘言ってると思うか?」
こんな嘘、付く必要がない。
矢崎の息子は俺を見て、黙りこんだ。
「あんた…極道なんだってな」
前髪を掴んで顔を上げさせた。
「俺のタマ狙いに来たんなら、腹決めてるよな?」
「…すいませんでした…」
矢崎は脱力して涙を流してる。
まさか自分の父親が変態だったなんて、笑い話にもならねえ。
「なに謝ってんだよ…てめえ…根性見せてみろやっ!」
「すいませんでしたっ…許してくださいっ…」
「あ?なんだと?お前、もう諦めんのかよ!?」
「すいませんでしたっ…すいませんでしたっ…」
矢崎を戒めているロープを解いてやった。
「ほら、殺れよ」
「許して…ください…」
あの時みたいに、ガタガタ震えてる。
「草彅」
「はい」
「縛っとけ」
「わかりました」
矢崎は立ちあがって逃げようとした。
草彅が横っ面をおもいっきり殴って、矢崎を床に沈めた。
「…後は、頼んだぞ」
「はい」
呆然とする相葉の腕を引っ張って俺は車に戻った。
運転席に相葉を押し込んで、俺は後部座席に座った。
「おい、車出せよ」
「…はい…」
相葉はエンジンを掛けると、ゆっくりと車を発進させた。