第6章 昇る竜
「…そうか…矢崎の息子は極道なのか…」
車に乗り込むと、草彅のヤサ(家)に向かった。
草彅につけていた大野組の若衆が俺たちを迎えた。
ヤサは古い神社の裏手にあるボロアパートで、他の入居者は居ない。
暗い場所だから、人通りもない。
草彅の本宅は別にある。
「閉じ込めておくには格好の場所だな」
「ええ…いいところでしょ」
「入居したかないけどな」
相葉は後ろをついてきてるが、さっきから蚊帳の外でぶすっとしている。
草彅が案内して、その部屋に入った。
ツンとした臭いが漂ってきて、思わず顔を顰める。
部屋に土足のまま上がると、床に転がってる男がいた。
あの時、車に発砲したやつ。
「矢崎か」
矢崎は俺の顔をみたら、しょんべんを漏らした。
「汚えなぁ…」
いきなり相葉が矢崎の顔を蹴りあげた。
「相葉…」
「お前よ、誰を狙撃したかわかってんのか?」
矢崎は顔を真っ赤にして、こくこくと頷いた。
「極東翼竜会の総長を弾こうとしたからにゃ、覚悟決めてんだろうな?」
「ひぃっ…許してっ…許してくださいっ…」
相葉は矢崎の髪を掴んで、何度も床に叩きつけた。
ガツンガツンと鈍い音が室内に響く。
「相葉、ちょっと下がってろや」