第6章 昇る竜
「あ、そうそう。オタクのね、なんて言ったかな。今日、撃たれたヤツ」
「…何か?」
「他のルートで、マークされてる。内容まではわからない。気をつけるよう言っといてくれ」
「ありがとうございます…」
「じゃ、よろしく頼むよ。総長」
さっと左手を上げて、遠藤は車を発進させた。
遠藤警視正は、喜多川ともう随分長いこと縁がある。
いわゆる癒着ってやつだ。
お互いのために、情報を流し合ってる。
昔から、警察と極道にはこういうズブズブの関係がある。
暴対法からこっち、厳しくなったと言われているが、実体はこんなもんだ。
相互扶助だってよ。
「おい…二宮んとこ行くぞ」
「はい」
二宮のことはあまり知られたくなかったから、相葉と松本で病院に向かうことにした。
東山の兄貴に、後のことは託した。
「すまない。明日は時間通りで行くから」
「わかった。二宮は大丈夫なのか?」
「腕を撃たれてるらしいが、命に別状はないって」
「そうか…行ってやれ」
「じゃ、頼んだよ。兄貴」
「…もうお前は総長なんだから、東山でいいよ」
「そんなこええことできねえよ…」
「ばか」
夜の街に、ひっそりと車を出した。