第6章 昇る竜
「えっ…」
「すまん。俺の個人的なことでな…」
「どういうことですか!?」
相葉が飛びかかってきそうな勢いで聞いてくる。
「まあ…な…」
逡巡して、結局話すことにした。
「矢崎って覚えてるか」
「あ…ええ…矢崎さんには世話になりました」
「智さん…」
松本が青い顔をした。
「いいから…お前は黙ってろ」
松本は何度か際どい目にあっている。
松本には後ろ盾が俺しか居なかったから、矢崎も遠慮がなかった。
力でねじ伏せれば、なんとかなると思っていたんだろう。
だから松本は、俺と矢崎のことはなんとなく察しているだろう。
「矢崎、殺したのは翔だ」
「えっ…」
「これにはいろいろ事情がある…そこは聞かないでくれ」
「…わかりました」
「二宮も噛んでる…」
「えっ…」
「俺のために、二人がやったことだ…」
「そんな…」
相葉が驚くのも無理は無い。
俺も二宮が噛んでるのは、最近まで知らなかったんだから…
「矢崎には隠し子が居て…この前俺を襲撃したのは、その息子だ」
「えっ…だから、調べるなと…」
「ああ…俺への個人的な復讐だからな…」
「いけません。あなたはもう総長です。個人的なことなんて、もうないんですよ…」