第6章 昇る竜
「…まあな…暫くは、ちゃんとやってやろうと思ってよ…親父への恩返しだ」
「そうですか…」
「忘れたわけじゃねえぞ?」
「わかってます」
コーヒーが俺の前に静かに置かれた。
「俺達はあなたについていくだけですから…」
「…ああ…ついてこいよ…」
コーヒーを啜った。
酸味があるが、奥深い味が舌に広がる。
「相葉」
「はい」
「姐さんに、このコーヒーどこで買うか聞いとけ」
「はい?」
「うまい」
ドアをノックする音が聞こえる。
松本がドアを薄く開けて確認すると、草彅が入ってきた。
「親父、いいか」
そう言って部屋の外に呼ばれた。
「二宮が病院に運ばれた」
「えっ…」
「命に別条はない」
「どういうことだ」
「詳しいことはわからねえが…あいつ、何か追ってただろ?」
「…ああ、俺の指示だ」
「腕を撃たれてる」
ぎりっと歯を食いしばった。
矢崎の背後にいるものの仕業だろうか…
「二宮に誰かつけたか?」
「城島を向かわせました」
「上等だ。お前も行ってくれるか?」
「わかりました。すぐ向かいます」
草彅が駆けていくのを見送って、部屋に戻る。
「どうしたんですか?」
「二宮が撃たれた」