第6章 昇る竜
俺の総長就任は、親父の四十九日が明けてからだ。
だが、もう事実上の総長になっている。
納得はしていない連中も、そのように俺を扱わざるをえない。
俺に手をついて挨拶していく姿はちょっと滑稽だった。
ある程度客人が集まったところで、俺は立ちあがった。
「お客人の皆様方、本日はありがとうございます」
頭を下げると、一斉にこちらを向いて姿勢を正した。
「これより極東翼竜会、喜多川一家を仕切らせていただきます、喜多川智でございます。若輩者ではございますが、以後、よろしくお引き立てを」
広間がざわついた。
俺が養子になったことは、知られていなかったようだ。
喜多川では渡世名を使うことはないから、すぐにわかったのだろう。
膝をつき、改めて姿勢を正して手をついた。
頭を下げると、一斉に拍手が起こった。
とりあえず、第一段階は済んだ。
そのまますぐに座敷を出て、姐さんの部屋に入った。
姐さんは居なかったが、すこし休ませて貰った。
相葉がコーヒーを淹れている。
松本はドアの前に立って背筋を伸ばしている。
「…驚きました」
相葉が呟く。
「なにがだよ」
「…いえ…総長の役目、お引き受けになるんですね…?」