第6章 昇る竜
葬式は、喜多川の家でやった。
ヤクザは斎場は貸してもらえないから。
業者を入れて、準備を整えていく。
姐さんの力を借りながら、どんどん喜多川一家の総長の葬式になっていく。
俺は親父の寝ていた広間でどっかり座っているだけだった。
小杉が傍らでずっと控えている。
こいつも腹を据えたのか、落ち着いている。
「小杉…」
「はい」
「一家を出たいか?」
「何を…そんなつもりはありません」
「そうか…」
俺に茶を差し出すと、小杉はまた黙りこんだ。
茶をすすりながら、これからのことを考えた。
「小杉…若頭として、親父の四十九日の法要は任せる」
「えっ…総長がなさるんじゃないんで」
「お前に任せる。いいな」
「はいっ…」
総長の法要を仕切るということは、大役だ。
それを任されるってことは、信頼してるってことになる。
だがなあ…
おめえのこと、許したわけじゃねえぞ?
小杉は早速立ちあがって座敷を出て行った。
相葉が傍らから湯のみをひったくっていった。
「なにすんだよ」
「なんで小杉に…」
「ああ…法要までは騒ぎ起こされたくないんでな」
「この前みたいに…?」
「だからあれは、小杉じゃねえよ」