第6章 昇る竜
止まっていた時が動き出した。
親父が、死んだ。
病院に駆けつけた時は、既に医師が諦めてベッドを離れた時だった。
「どうぞ、皆さん話しかけてください…」
目を閉じたままの親父に、何を伝えればいいかなんてわからない。
だけど近寄って手を握った。
「親父…」
ぴくりと親父のまぶたが動いた気がした。
「悪いな…親父よ…」
ぽつり、呟くと親父は笑った気がした。
それからだんだんと部屋に幹部が集まってきて、親父のベッドの周りを取り囲んだ。
俺は窓辺に立って、雨の街を眺めてた。
小杉は、まだ来ない。
突然、医師や看護師の動きが慌ただしくなる。
親父の目を開いて確認している。
ああ…逝ったか…
「お亡くなりです…」
医師たちは一旦、病室を出て行った。
ベッドを囲んでいる幹部は、俺を見た。
「総長…」
「総長…!」
姐さんが立ち上がり、俺の元に歩いてきた。
スカートの裾を直すと、俺をまっすぐ見た。
「総長、ご指示を」
「…ああ…」
病室のドアが開いて、小杉が入ってきた。
その瞬間…
幹部たちは俺に向かって頭を下げた。
「総長就任、おめでとうございます!」