第5章 臥竜
荒い息を吐きながら、二宮の顔を見つめる。
幸せそうな顔して、二宮は泣いている。
「なんで…泣く」
「だって…」
それ以上言葉にならなくて、二宮は俺にしがみつく。
「泣くな…」
ポンポンと背中を叩きながら、落ち着くのを待つ。
「和也は…俺と居ると、泣いてばかりだな…」
「そんなことっ…」
「すまねえな…こんな男で…」
「智さん…」
「おまえを幸せにできねえよ…」
「智さんっ…」
がぶりと二宮が肩に噛み付いた。
「っつ…」
「もうっ…バカっ…」
「てめえ…バカとはなんだ!」
「バカだからバカだっつってんだ!」
「あんだと!?」
「俺はっ…あんたの傍にいるだけでいいって言っただろ!?」
「和也…」
「あんたの耳はどこに付いてるんだ!あんたの頭は飾りか!?」
呆然と二宮の顔を見ていた。
顔を真赤にして怒ってる。
「あんたじゃなきゃ…ケツの穴にあんなもん突っ込ませねえよ!あんたじゃなきゃ…勃たねえよ!それが俺の幸せだよ!」
初めて、激しい感情を俺にぶつけた。
今まで、犬みたいに従順にしてたのに…
笑いがこみ上げてきた。
「何笑ってるんです!?」
「いや…和也…」
「なに!?」
「おまえ、そのほうがいい」