第5章 臥竜
「いや…この件は、俺が背負う」
「智さんっ…」
「誰か居る」
「え?」
「矢崎の息子のバックには誰か居る」
「…チャカ流したヤツが居るってことですか…」
「ああ…このタイミングだからな」
「なおさら、俺に殺らせて下さい…」
「だめだ…二宮」
二宮の手を取った。
「俺のことで手を汚すな…」
小さい手だ。
こんな小さな手で俺を守ろうとしてる。
「智さん…」
手を擦ると、温かい。
「手出しするな。俺の好きにやらせてくれ…」
二宮は返事をしなかった。
そのかわり、目にまたたっぷりと涙を溜めていた。
「泣くな…和也…」
「極道は…極道ってもんは、手なんか汚れてて当たり前でしょう…」
「和也…」
「俺は…ガキの頃から真っ黒ですよ…」
「そんなことねえよ…」
「俺は…」
ぎりっと二宮は唇を噛み締めた。
「汚い…」
「汚くなんかねえよ…」
「俺を闇から救ってくれたのは…あなたです」
「和也…」
「あなたにとって翔さんがそうだったように、俺はあなたに救われたんだ…」
下を向くと、ぽとりぽとりと涙がこぼれ落ちた。
「わかった…和也、もう思い出すな…」
「俺はあなたのためなら、泥沼に浸かっても後悔はない」
俺を見上げると、顔をごしっと擦った。
「そうでしょう?智さん」