第5章 臥竜
そんな薄ら寒いものを抱えていた俺に、翔は手を差し伸べてくれたんだ…
「なあ…二宮…」
「はい…」
「真っ暗闇から救ってくれたのは…翔だったんだ…」
「…はい…」
「だから…」
「智さん…」
二宮が俺の髪をそっと撫でた。
「いいんです…」
「悪かった…二宮…悪かったな…」
「いいんです…智さんのためなら俺、なんだってします」
ゆっくりと俺をベッドに寝かせると、二宮は肩の吉祥天を撫でた。
「俺達は…一心同体です…あなたを想う気持ちは、皆一緒ですから…」
そう言うと、反対の肩にある青龍を撫でた。
「この竜は、裏切りません」
そう言うと、微笑んだ。
俺は頷くと、身体を離して二宮の顔を見た。
「二宮…頼みがある」
「なんでしょう」
「矢崎の息子…どこに居るか調べてくれ」
「…わかりました」
「お前一人でやれるか?」
「やってみます」
「わかったら、すぐに俺に教えろ」
「わかりました」
きゅっと口を引き結ぶと、俺の顔を手で包んだ。
「絶対に、俺も一緒に行きます」
「…わかった。ただし、手を出すな」
「いけません…俺が消しますから」
「だめだ…これ以上は…俺個人のことだから」
「ここまで関わって…後は知らない顔なんてできません」