第5章 臥竜
その後も、味を占めた矢崎は隙があれば俺を弄んだ。
矢崎は少年性愛者だったのだ。
中学に上がっても俺はほとんど姿が変わらなかったから、それは続いた。
親父に言ったら殺すと脅されて、俺は誰にもそれを打ち明けることができなかった。
それに男としてのプライドがそれを許さなかった。
ある日、声変わりが始まった。
それを境にぱったりと矢崎は俺を弄ばなくなった。
少年愛の矛先が松本に向かいそうになって、俺は必死で守った。
松本を身辺に引きつけて、離さなかった。
二度と松本を汚い大人の餌食にはしたくなかった。
そのまま何年も、松本の声変わりが始まるまでそんな生活が続いた。
そしてその生活が終わると、気づいた。
俺は、男にしか勃たなくなってた。
何年も女みたいにされて、それに嫌悪感しかなかったのに…
気づいた途端、全てが馬鹿らしくなった。
女を抱いたこともない情けない男。
フラフラと街に出ては、知らない男に抱かれた。
だけど、いつも心は寒くて…
自分が欠陥品になったみたくて…
安定しない気持ちを、債権者にぶつけて憂さ晴らしもした。
ボコボコに人を殴りつけて、気持ちがスカッとした。
でも…そんなことじゃ、気持ちの溝は埋まらなかった。