第5章 臥竜
「…すいません…辛いことを思い出させました…」
「いや…いいんだ…」
そっと二宮が俺を抱きしめた。
「二宮…もっと…」
「はい…」
ぎゅっと抱きしめられると、安心した。
「俺は…あいつに…」
「智さん…」
小学校も5年生になると、矢崎の視線がいよいよ気持ち悪くて。
俺はもう近寄らなくなっていた。
それでも親父が何かと組事務所に連れて行くから、顔を合わせることはあった。
ある日、出入りがあって…
急に事務所が無人になった。
親父にここにいるように言われて、俺はたった一人事務所に残った。
そこに矢崎がやってきた。
俺を家に送るからと、矢崎の車に乗せられた。
でも着いてみたら、そこは知らないところで。
その家に連れ込まれて、俺は矢崎に身体を好きにされた。
何が起こっているのか、わからないまま俺は弄ばれた。
「情けねえな…思い出すとこんなに…」
手が震えて止まらなかった。
あの時の恐怖はその後もずっと俺を苛んだ。
翔が来るまで…
あの恐怖から救ってくれたのは、翔だった。
「智さん…もう…」
「ごめんな…二宮…俺のことで手を汚させて…」
「そんなっ…そんなこと言わないで…」