第5章 臥竜
「矢崎…」
「え…?」
「さっきの男…俺、見たことがあるんです…」
「なんだと?」
俺の手を離すと、二宮は立ちあがった。
「矢崎の息子です」
「嘘だろ…聞いたことねえぞ…」
「隠し子です…矢崎には3人愛人が居ました。その内の一人の産んだ子です…」
「なんでお前がそんなこと知ってるんだ…」
「翔さんに言われて…矢崎のこと消したのは俺です」
「え…」
「その時に身辺洗ったのも俺です」
「二宮…」
「黙っていてすいませんでした…でも」
「言うな…知ってたのか…全部…」
「…はい…」
「電話持って来い」
すぐに二宮は部屋を出てスマホを持ってきた。
事務所に電話すると、鉄砲玉の出処を調べるのを止めさせた。
城島はどうしたのかとしきりに聞いてくるけど、俺は何も答えず電話を切った。
「組長…」
「いいから…」
矢崎は大野組の幹部だった。
親父の頃から居るやつで、小さい頃からなにかと俺を構ってくるやつだった。
でも俺は、あいつがどうしても好きになれなかった。
目が…
目が気持ち悪かったんだ。
ぞくりと身体を這い上がってくるものがあった。
それでもお菓子を買い与えられたりすると、つい後をついて回ったりして…
ガキの頃はよく連れ回された。