第5章 臥竜
「二宮…」
ドライヤーのスイッチを切ると、切なげな目で俺を見上げた。
「智さん…」
そっと立ちあがって、ベッドに歩いていくる。
俺の傍までくるとしゃがみこんで俺の手を握った。
「やめてください…」
「え?」
「今日みたいなこと、やめてください…」
俺の手を額に当てると、目を閉じた。
深い溜息を吐くと、少し震えた。
「…自分から的になるようなこと、やめてください…」
「二宮…」
「あなたが居なくなったら俺…一緒に死にます」
「ばかやろう…何言ってんだ…」
「俺はあなたがいなけりゃ、死んでました。だからこの生命はあなたなんだ…」
ぎゅっと手を握り直した。
「翔さんの後を、あなたが追うというなら俺もついていきます…だから…この手を離さないでください…」
二宮は顔を上げると、まっすぐな目で俺を見た。
「愛してます…智さん…」
「二宮…」
「誰を想っていたって…俺の気持ちは変わりません」
ぎゅっと口を引き結んで、二宮は涙を堪えている。
「一緒に…居るだけでいいんです…お願いです…」
ぽろりと涙がこぼれた。
「男が…泣くんじゃねえよ…」
「すんません…」
ぎゅっとバスローブの袖で涙を拭くと、俯いた。