第5章 臥竜
「まあ、間違ってなければな…内ゲバだ」
『小杉か…』
「まだわからねえがね…」
『わかった。まあとりあえず誤魔化しとくわ』
「頼む。兄貴しか頼れねえ」
『ばあか。おめえは昔からそういうのがうめえよな…』
「ふっ…兄貴のことも誑し込んでやろうか?」
『男にゃ興味ねえよ』
「知ってる。俺もだ」
『このばか…』
くっくっくと兄貴は笑って電話を切った。
今、大野組が目立つことはできない。
親父が生きてる今、ドンパチ始める訳にはいかない。
極東翼竜会の喜多川一家の恥を晒す訳にはいかない。
「それがわからねえ小杉だとは思わないけどな…」
それほど焦っているのか…
「チビってんじゃねえぞ…」
スマホをベッドに放り投げてゴロンと横になる。
風呂に入ったお蔭で、身体がすっきりしている。
若衆を呼んで、スマホを投げ渡した。
緊急の用件以外、繋がないよう伝えた。
若衆が去ると、バスローブを脱ぎ捨ててベッドに入った。
二宮がバスルームから出てくる。
「髪、乾かせよ…?」
頷くと寝室の隅で髪を乾かした。
そんな二宮の横顔をじっと見る。
幼い顔つきなのに、激しい一面もあって…
きっと腹の中は煮えくり返ってるに違いない。