第5章 臥竜
「智さん…智さん…」
二宮の呼ぶ声がする。
目を開けると、こちらを心配そうな顔で覗きこんでる。
いつの間にか、事務所のソファで寝ていたようだ。
「お前…いつ帰った」
「先程、松本と一緒に戻りました」
「おう…そうか…」
起き上がるとびっしょり汗をかいていた。
「着替え、持ってきましょうか…」
「いや…家に帰る。お前、運転しろ」
「はい」
部屋を出ると、相葉と城島に全て任せた。
松本を呼ぶと、喜多川へ引っ越す準備を指示した。
「相葉がいくらか進めてるけど、お前が準備してたんだからやってくれ」
「はい。では…一部進めます。全部やるのは、総長がお亡くなりの後で…」
「ああ…お前よくわかってる。それでいい」
「わかりました」
ぽんと肩を叩いた。
「任せたぞ。潤」
「…はいっ」
いつもはクールにしているのに、なにかの拍子に子供のような顔をする。
そうかと思えば、昨晩のようにどこまでもオスの顔を見せる。
こいつには敵わない。
「じゃあ後は頼む。何かあったら連絡くれ」
「わかりました」
「二宮もこのまま連れて行くから」
「はい」
相葉が玄関まで見送る。
「ゆっくり休んで下さい。二宮もな…」
「ああ…じゃあ頼んだ」