第22章 folder.6
「ああ…そうだな。松本くん…」
にっこりと松本に向かって笑うと、俺のほうを真っ直ぐに見た。
「櫻井さん、纏まった金を預けたい」
「…ありがとうございます」
話が早いもんだ…
それほど松本が赤坂の心をロシア女で掴んだのか…
それとも、現ナマの力か…
「実は私、こういうことをやっています」
懐から名刺ケースを出すと、名刺を取り出した。
「これは…」
”真の心”の名刺だった。
教団本部統括部長という肩書がついている。
「ええ…宗教団体の幹部をしております。ここの金を運用したい」
「…赤坂さんに権限がお有りのお金ですか?」
「…それは、もちろん…」
赤坂は背もたれに身体を預けると、足を組んだ。
「経理関係は私に任されています。だので、権限は私が握っているのと同じなんです」
ということは…やっぱり”お使い様”の許可なくやるってことなんだろうな…
「分かりました。この件は全て赤坂さんと進めていく形ですね?」
「いや、教団に二宮というのがいるから…この人と連携してもらいたい」
もう一枚名刺を取り出した。
それは女性の名前だった。
「二宮和子…」
二宮の空気が変わった。