第22章 folder.6
俯いてしまった二宮の表情は見えない。
「でね…翔さん…俺、松本に話を聞いたことがあるんですよ…」
「…ああ…」
松本は親に強要されて、自宅で売春をしていた。
それも大人の男相手の売春だ。
「だから、酒飲ませて当時のこと…ちょっと聞いたんですよ…」
「ああ…」
「ボンのことが関係してるって聞いてたから、松本にもそれでつついてみたんですよ…」
声が少しかすれた。
「松本は…やっぱり叔父貴の標的にされそうになったと言っていました」
「なんだと…」
「だけど、ボンがそれを止めたと…片時も松本のこと離さないで、叔父貴を避けてくれたんだと…」
やっと二宮は顔を上げた。
「翔さん…ボンは…体を張って、松本を助けたんだと…」
「え…?」
目の前がぐにゃりと歪む。
脳が二宮の言葉についていけてないのに、それはすごい衝撃で俺の頭に入ってきた。
「体を張って…?」
「ええ…松本はそこまでしか喋りませんでしたが…だから、確証はありません…」
「待てよ…もしかしてボンは…」
「松本が保護されたとき、まだ小学生でした。ボンはここで生まれ育ってる…松本が来る前、何があったか…」
ここまで来て唇を噛み締めて黙り込んだ。