第4章 傷だらけの翼
悲鳴のようなかすれた声が聞こえる。
ドスンと音が聞こえるから、殴られてるな…と思った。
あの相葉の顔の痣…こいつらか…
思った瞬間、頭に血が上った。
ドアを開けて中に土足のまま入った。
相葉を殴っていたおっさんを蹴りあげてボコボコにした。
相葉はまた驚いた顔をして俺を見てた。
そのおっさんとおばさんは、相葉の実の両親だった。
相葉を金づるにして、二人して働きもせずゴロゴロしてるろくでなしだった。
失語症になった原因を作ったのは、こいつらだった。
この部屋で、売春をさせてたのだ。
俺はそいつらにきっちり相葉と縁を切らすことを約束させて、相葉を連れて部屋を出た。
帰り道、相葉の涙は止まらなかった。
いつまでもいつまでも涙が止まらないから、途方に暮れた。
「おい、相葉…」
「はい」
「お前今でも親に会いたいと思うか…?」
「え…」
途端に相葉の顔色が変わる。
少し震えてる気がした。
「まさか…会いたいわけないでしょう…」
「あんなに怒られても金持っていってただろ?」
「あの時は…親しかいなかったんです。俺の世界には…」
そう言うと、切ない目で俺を見た。
「今の俺には…ちゃんと家族がいますから…」