第4章 傷だらけの翼
ヤクザの世界は、上に立つものが親。
舎弟は子。
だから今の相葉の親は俺だ。
相葉の家族は俺だ。
だから、相葉も連れて行く。
だってこいつには…
こいつだけじゃない。
相葉も二宮も松本も…俺しか家族がいないのだから…
こいつら全員、普通に女を抱けない。
心に傷抱えて、真っ直ぐ歩くことも叶わねえ。
まだヤワな時期に大人の勝手でついた傷は、いまだ治ってない。
多分、一生治ることがないだろう。
家族を作ることは、叶わねえだろう。
俺も、同じだ…
今だに翔を喪ったことから、立ち直ることもできず。
かと言って、死ぬこともできず。
だらだらと生き延びてる。
守るものばかりが増えて、身動きが取れなくなってる。
そんな俺に、あいつらはお似合いだ。
だから…喜多川にはあいつらも一緒に連れて行く。
「組長…?」
「相葉ぁ…」
腕を広げて、相葉の顔を見る。
「来いよ」
「え…?」
「抱きしめてやるよ」
相葉は真っ青な顔をしながら、俺の懐に飛び込んできた。
「さ…さと…さと…智さん…」
「大丈夫だ…俺は相葉を見捨てたりしねえから…」
昔のことを思い出すと、吃音になる。
小さく震える身体をぎゅっと抱きしめてやった。
「頼りにしてる…相葉…」
ピタリと止まった震え。
俺を見上げた相葉は、しっかりとまっすぐ俺を見た。
「組長、どこまでもついていきます」
【傷だらけの翼 END】