第4章 傷だらけの翼
ボロ雑巾みたいになってる相葉に、俺はジャケットを掛けてやった。
ほんの気まぐれだ。
驚いて俺を見上げる顔には、いくつも痣がついてた。
今の男たちにやられたのかと聞くと、黙って首を横に振る。
じゃあ誰にやられたと聞いても黙っている。
相葉は失語症だった。
何か精神的ショックを受けて、喋れなくなっていたのだ。
雀荘で売春まがいのことをやっていたから、組事務所にしょっぴいた。
勝手にウチのシマでそんなことされたんじゃ、サツから要らねえ腹を探られる。
しょうがねえから、相葉を俺の舎弟にした。
これなら売春なんかしねえでも生きていけるだろ。
でも相葉は給料代わりの小遣いを渡すと、すぐに使ってしまう。
いつも金がなくて、ペラペラの服を着ていた。
叱りつけてもそれは直らない。
ある日、小遣いをやった相葉が事務所を出て行く後を尾けた。
どんな金の使い方してるのかと思って、見届けてやろうと思った。
場合によっちゃ、殴りつけてでも止めようとしていた。
相葉はボロいアパートの一室に入っていった。
ボロいから外にいても中の音がよく聞こえる。
どうやら中にいるおっさんとおばさんに金を渡しているようだ。
金が少ないと相葉を怒鳴りつける声が響いた。