第22章 folder.6
俺は相変わらずボクシングジムに通っているし、ボンも相変わらず絵を描いたりフィギュアを作ったりして週末を過ごしている。
最近、組長は愛人の所に行ったっきりで帰ってこないから、大野の家の中はのんびりとしたものだった。
たまに城島さんがボンのお目付け役として様子を見に来るが、俺がいるからすぐにニッコリ笑って帰ってしまうことが多くなっていた。
「おまえ、大した出世やんか…」
渋谷さんがタバコの煙を鼻から出しながら感心してる。
「そうですか…?金ですよ、金…」
「まあな…でも、身体もえらいごっつくなったやん」
「まあ、でも週末しかジムいけてないですし…」
「ふうん…」
夜の渋谷は、若い奴らが出すざわめきに満ちている。
新宿や銀座の雑踏とはまた違うものがある。
路上にアクセサリーショップを出して乾燥大麻を売りさばく渋谷さんは、相変わらずだった。
「まあでも…あの頃はどうなることやらと思ったがな…」
「また…もういいでしょ。昔の話は…」
苦笑いしてると、急に渋谷さんは真顔になった。
「人、バラしたことはまだないんやろ?」
「…まあ…」
「…それがええで…そういうのは手下にやらしときや」