第21章 folder.5
宴会が終わる頃にはボンは酔っ払ってどうしようもなかった。
でも宴も酣になると、家に帰ると暴れだした。
景子姐さんは泊まって行けと言ったが、ボンはきかない。
しょうがないからタクシーが呼ばれて、俺が抱えて帰ることになった。
大野の家に戻る頃には、すっかり熟睡をしていて目を覚まさなかった。
組長はそのまま喜多川の親父さんと飲んでくるということで、あっちに泊まるそうだ。
今、大野の家には俺とボンの二人っきりだった。
「ボン…家に着きましたよ」
担いでそう声を掛けても、反応はない。
ボンの部屋にはいると、そっと身体を横たえた。
昏昏と眠るボンの顔は、幼く見えた。
「どうしたんだよ…智…」
ベッドに腰掛けてその頬を手で包む。
伝わってくるぬくもりは、こんなに温かいのに…
何故か俺の心は寒かった。
「智…」
もっと
まだ上を
智にすべてを託される男になるんだ
見えないガラスの壁が、俺と智の間にはまだある。
俺自身が乗り越えられない壁でもある。
二宮にはガキの頃の自分なんて捨てろと言いながら、自分が一番こだわっているのかもしれない。
「強く…なりてぇなぁ…」
呟いた声は、智の寝息に吸い込まれた。