第21章 folder.5
草彅の叔父貴の顔も見えた。
スーツの膝を崩してあぐらをかいて座っている。
その奥には紋付きを着た大野組の幹部、そしてさらにその奥には…
「あれ?組長は?」
一番奥の上座に座っているはずの組長の姿は見えなかった。
草彅の叔父貴に挨拶をしながら近寄って聞くと、喜多川の親父に挨拶に出向いているとのことだった。
「そうですか…」
「櫻井、良かったな」
「え?」
「お前に株仕込む時は、どうなることやらと思ったけど…」
「叔父貴…」
「ただのボンボンじゃなかったな」
そう言って俺に向かって手をついて頭を下げた。
「この度はお目出度う」
「…叔父貴…ありがとうございます!」
ガヤガヤと幹部連と喋りながら待っていると、障子戸が開いてボンが入ってきた。
「櫻井」
「あ、ボン…」
「親父は?」
「それが、喜多川の親父に挨拶に行ったままなんです」
「そっか。ま、しょうがねえな」
城島さんに髪型までいじられたらしく、髪をオールバックにしている。
それが気になるのか、しきりに髪を掻いている。
「崩れますよ?」
「ああ…なんかこれ…痒い」
「もう…」
「翔みたく短くしておけばよかった」
そんなことを喋っていると、引退式が始まると知らせが来た。