第21章 folder.5
戻ると、ボンはベッドの上でさっきよりも丸まっていた。
窓際のテーブルにコーヒーを置くと、その体を抱え上げて膝に載せた。
「智…?」
「ん…」
身体が冷え切っていたから、ぎゅっとそのまま抱きしめてた。
「コーヒー、飲もう?」
「うん…」
ベッドに座らせて、手にマグカップを載せる。
「熱い…」
「温まるよ」
ずずっと二人でコーヒーをすすった。
「…翔も…」
「うん?」
「親と、なんかあったのか…?」
手元のマグカップを見つめたまま聞いてきた。
「まあね…」
「そっか…」
「智は?」
「え?」
「なんで…二宮より汚れてるの?」
その質問に智は答えなかった。
俺が親となにがあったか言えないように…
智にも闇があるんだ。
「二宮は?」
「罰として庭掃除させてます」
「ふふ…素直にやってっかな…」
やっと智が笑ったから、安心した。
コーヒーを飲み終わって、二人で庭を覗いたら必死こいて箒を動かしている二宮の姿が見えた。
それを見て、二人でちょっと笑った。
ふいに笑うのを止めた智は、ぽつりと呟いた。
「…なんで…」
「え?」
「なんで、ガキが大人の犠牲にならなきゃいけねえんだろうな…」