第21章 folder.5
ボンに縋るように二宮は身体を起こした。
「俺は…俺の家族は汚い…汚かったっ…俺もっ…だからっ…」
泣いて泣いて、声も出せない。
「わかったから…落ち着け…」
ボンはその小さな体を抱きしめてやった。
俺の方を見上げると、眉間が暗い。
「二宮…おまえはちっとも汚かねえよ…」
「俺っ…俺はぁっ…」
「わかったから…」
そのまま二宮の呼吸が落ち着くまで、ボンは二宮を抱きしめ続けた。
背中を擦ってやって、まるで母親が子供をあやしてるみたいだった。
落ち着いた二宮がぽつりぽつりと語りだしたのは、信じられない話だった。
「俺は…小学生のころ、母親に犯されたんです…」
近親相姦を強要させられていた二宮は、それを知った父親に暴力を振るわれていたそうだ。
そして、児童養護施設に引き取られることになる…
その間、実に5年…
両親からの虐待に、二宮は心を殺されてしまったんだ。
「俺は…汚れきってしまいました…だから、ボンの側にはいられないんです…今まで、本当に…」
「ばかやろ。うるせえんだよ」
ぐしゃっと二宮の髪を撫でると、ボンは笑った。
「誰が俺のそばにいるかは、俺が決める」