第21章 folder.5
「家族…?俺が…?」
「そうだよ。だからおまえ、ここに居るんだろ?」
「嘘だ…」
「嘘じゃねえよ」
また、ぽんぽんと頭を撫でた。
「二宮。ここに居ていいんだぞ?」
暫く黙り込んで二宮は俯いていた。
「気が済んだら入ってこいよ」
そう言ってボンは俺を連れて母屋に足を向けた。
「俺は…」
ぽつり、二宮の声が聞こえた。
「俺…出ていきます…」
振り返ると、二宮は地面に頭を擦りつけて土下座していた。
「すんませんでしたあっ…ボンっ…すんませんでしたあっ…」
ボンは二宮に歩み寄るとしゃがみこんだ。
「何言ってんだてめえはよ…ここに居ていいって言ってんだろうが」
「俺は…ボンに甘えていましたっ…すんませんでしたっ…」
「いいから、頭あげろって…」
髪を掴んで顔を上げさすと、その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「俺は…ボンの側にいられるような人間じゃないんですっ…」
「なあんでだよ…」
「俺はっ…母親と寝ていましたっ…」
絞り出すような声だった。
「だからっ…俺は汚いんですっ…ボンの側にいたら、だめなんですっ…」
「おいっ…」
「に…逃げたかった…っ…あんな家族から…逃げたかったっ…」