第21章 folder.5
二宮は陶器の椅子に座りながら項垂れている。
肩を掴むともう一発くれておいた。
本気で殴ると死ぬから、加減はしておく。
また襟首を持って座らせると、顔を上げさせた。
「なんか言うことあんだろ?」
ぷいっと横を向く。
ガキか…
ボンが二宮の横に立つと、服の袖で唇に滲む血を拭いてやった。
「なっ…なにすんだよっ…」
まだボンに突っかかってく元気はあるらしい。
「いいから、座れ!」
立ち上がる肩を掴んで引き戻した。
ぶすっとしたまま、二宮は椅子に座った。
「お前なあ…なにしてっかわかってんのか?」
ぶすっとしたまま下を向いて答えない。
もう20歳になったというのに、こいつは幼さが抜けない。
色白の頬を膨らませてむくれてるみたいに見える。
「……そんなに死にたいのか」
びくりと肩が揺れた。
やっぱり…ボンは間違ってなかった。
「……あんたには、関係ないだろ……?」
久しぶりに聞いた二宮の声は、やっぱりぶすっくれていて。
この世のすべてを憎んでるみたいに見えた。
「関係あんだろうが…人を巻き込むな」
「ああっ!?」
「おまえなあ、自殺するなら一人でやれよ」