第21章 folder.5
そんなことを思い出しながら大野につくと、真っ先にボンの部屋に駆け込んだ。
「いない…」
お手伝いさんに聞くと、庭で二宮になにやら作業をさせているという。
「はあ?こんな寒いのに?」
慌てて庭に出ると…
「あちゃー…」
二宮がボンをぼこぼこに殴っていた。
「ちょお!何やってんだおめえはっ…」
襟首を捕まえて動きを止めようとするが、二宮は止まらない。
「離せっ…離せよおっ…」
あんまり暴れるから一発くれてやって黙らせた。
ずるずると二宮を信楽焼のテーブルセットまで引きずっていく。
陶器の椅子に座らせるとボンのところに駆け戻る。
「ボン…大丈夫ですか?」
「ああ…大したことない」
腕を引っ張って立ち上がらせると、案の定傷は浅い。
「やっぱり力が入ってねえんだよなぁ…」
「いや、そういう問題じゃないでしょう。若衆がボンを殴りつけるなんざ…」
「だから、二人っきりのときにしかやらせてねえよ」
そういって不敵に笑った。
…本当にこの人は…
「もうやめてください。後は俺が引き受けますから…」
俺の部下になるんだ。
これから先は、俺の仕事だろう。
にやっと笑うと、ボンは頷いた。