第21章 folder.5
「はあ?何言ってんだ…」
「人を殴りたいなら、ボクシングジムを紹介してやる」
「はっ?」
「死にてえなら、いい場所紹介してやんよ」
「あ?」
「俺が飛んだ場所だから…死に損なうかもしれねえけどな」
二宮が俺の顔を見た。
不思議なものをみるような顔してやがる。
「俺は、一回死んだ」
じっと二宮の目を見つめて言ってやった。
「何言ってんだよ…あんたが?」
探るような目で見つめている。
「俺が死んじゃいけねえかよ…」
「嘘だろ…あんたみたいな人が」
「俺にだっていろいろあったんだよ」
ぺっと二宮はツバを吐いた。
血が混じってる。
「意味わかんねえこといってねえで、俺のことフクロにすりゃいいだろうが」
言い終わらないうちに殴りつけた。
吹っ飛んでいった二宮をまたひっつかんで殴りつけた。
ボンはテーブルに凭れながら、それを黙ってみていた。
地面に倒れ込んだ二宮の髪をひっつかんで顔を上げさせた。
「…俺はな、親に殺されたんだよ」
二宮にしか聞こえない、小さな声で囁いた。
「え…?」
口の端から血を流しながら、二宮は俺を見上げた。
「お前は、誰に殺されたんだよ?」
大きく目を見開いて、二宮は俺を見つめた。