第21章 folder.5
「そういえば…相葉や松本は、どうして大野組に来ることになったんです?」
これから部下になる奴らのことは、ある程度把握しておきたかったのもあるが、深く考えないで聞いた。
途端にボンの顔が少し強張った。
「…ボン…?」
「ああ…翔には、話しておいたほうがいいかもな…」
それから、相葉と松本の過去をボンは語りだした。
長い、長い話だった…
「そんなことが…」
「ああ…」
ボンが松本に強く出られなかった理由がわかった。
「…驚きました…」
「だろうな。翔には俄には信じらんない話だろうがな…こんな話、腐るほど転がってるんだ…」
「いや、話には聞いたことくらいはありましたけど…まさか…相葉なんて普段そういう影がちっとも見えないし…」
「…雅紀は、だから強いやつなんだよ…大野組に来た頃なんて…喋ることすらできなかったのにな」
「え…?」
「失語症ってやつ…?精神的ショックを受けて、喋れなくなってたんだよ」
思わず口に手を当てて黙り込んだ。
「だけどあいつは立ち直ったんだ…強いやつだと思うよ…」
普段の相葉は…いつもにこにこ笑って、ときどきどもったりもするけど、明るいやつだった。