第21章 folder.5
「智は…二宮の話、聞いたことある?」
「何の話?」
「過去の話…親がどうたらとか」
「ああ…深く話したことはないな。だけど、あいつの身上は調べてあるよ」
そこまで言うと、俺の目を覗き込んだ。
「なんか、あったのか?」
すぐにまた、大野組のボンの顔に戻る。
こんなにころころと表情を変える人を、俺はみたことがなかった。
永遠に見つめていたい…
俺は松本から聞いた話と、それからあの名簿をボンに見せた。
「…そうか…間違いなくこれは、二宮の親だろうな…」
ボンは自室に戻るとすぐに戻ってきた。
手には書類を持っている。
「これ、二宮の調査したもの…ま、軽く調べてあるだけだけどね」
それは本当に簡単な調査書だった。
それによると二宮は中学生のときに施設に強制入所になっている。
原因は親からの虐待…
「松本の話と一致しますね…」
ふと、ボンの顔をみあげると険しい顔をしていた。
「どんな…虐待だったんだろうな…」
この調査書だけでは、伺い知ることはできなかった。
「さあ…松本はなんか聞いてるのかもしれません…顔色真っ青だったし…」
「え?潤が?」
「ええ…なんかとても動揺してるようでした」