第21章 folder.5
「まあ、様子見とくよ…」
紫煙を吐き出すと、潤は少し顔を歪めた。
泣きそうになってる。
「どうした?」
「いえ…なんでも…」
顔が青い。
少し手も震えているようだ。
「おい…どうしたんだよ…」
「さっ…触るなっ…」
肩に触れようとした手をすごい勢いで払われた。
「松本…」
はっとした顔をして真っ青な顔をこちらに向けた。
「すっ…すんませんっ…翔さんっ…」
「いや…いいんだがよ…二宮よりもお前が大丈夫かよ…」
「大丈夫です…俺は…終わったことなんで…」
終わったこと?
それは一体何だと問う前に、松本は踵を返した。
「事務所、戻ります」
「あ、ああ…」
大野の家に戻ると、パソコンの部屋にまっすぐ入った。
最近、賭博のほうが忙しくて株まで手が回ってなかった。
一人でやっていくってのは、ちょっと大変なもんだとため息を付いていると、ボンが部屋に入ってきた。
「翔…」
「あ。ボン」
「疲れてるの?」
そっと椅子に座ったまま背中から抱きしめられた。
「…少しね…」
「なんかあった?」
少し甘えた口調。
もう大野智の仮面は脱ぎ捨てているんだ。
ここに居るのは、俺の恋人の智だった。