第21章 folder.5
「あー…お前なんか話聞いてないの?」
あの名簿の名前…
気にはなっていたが、二宮の顔をみてないもんだからなんにもしてなかった。
「あいつは、なんにも言わないから…わかんないっす…」
高校生の頃から見知っているが、最近の松本は少し大人になったようだ。
柄シャツの前を思い切り開けて、白い素肌を覗かせている。
それがまた、不思議にこの男には似合っていた。
本当は…ボンはこいつを堅気に戻したがっていた。
でも松本…潤は言うことを聞かなかった。
ボンの側に居させてほしい。
弾除けでも何でもやる。
もしそれが叶わないなら死んでやる―――
そこまで言われてボンは強く出られなかった。
渋々潤を大野組に入れるしかなかった。
「荒れてるってどんな風に?」
胸ポケットからタバコを取り出すと、松本が火を着けてくれた。
「翔さんは…あいつの話、聞いたことありますか?」
「いや…俺は話したことねえな」
「そうですか…俺もそんなに詳しくは話したことはないんですが…」
言い難そうに黙り込んだ松本は唇を噛み締めた。
「虐待…受けてたみたいです」
「は?」
「親から…」
「…ふうん…」
あいつも、人には言えない闇を抱えてるってことか…